ビタミンB1はチアミンと称される有機化合物で、脚気の原因として知られる水溶性ビタミンです。

働き

糖質は最終的に小腸でブドウ糖に分解され吸収されます。ブドウ糖がピルビン酸になるまでを解糖系といい、ピルビン酸はアセチルコエンザイムAになり、クエン酸回路に入って酸素を消費して代謝され、エネルギーを産生します。ビタミンB1は、これら解糖系やクエン酸回路のエネルギー代謝で酵素作用の発現に必須の補酵素として働きます。ブドウ糖をエネルギー源としている脳やその支配下の抹消神経の働きに関係しています。

不足による病気

ビタミンB1が不足すると、十分にエネルギーを産生できなくなり、全身倦怠感、食欲不振などの症状が現れます。重度の不足では脳や神経に障害を起こし、脚気やウェルニッケ・コルサコフ症候群になります。脚気は、手足のむくみやしびれ感、筋力低下、動悸などの症状が現れ、心不全で死亡することもあります。ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、眼球運動の麻痺や歩行運動の失調などの中枢神経症状を伴い、慢性化すると物忘れ、見当識の喪失、作話などの精神症状が現れます。

多く含む食品

1日のビタミンB1の摂取推奨量は成人男性では1.3~1.4mg、成人女性では1.1mgです。ビタミンB1は、豚肉・レバーなどの肉類、魚類などの動物性食品、精白されてない胚芽米や玄米・外皮や胚芽を含む全粒粉小麦のパンなどの穀類、胡麻などの種実類、豆類などの植物性食品に多く含まれています。過剰に飲酒するとビタミンB1の吸収が悪くなり、大量に消費されます。

薬剤とサプリメント 

ビタミンB1製剤の経口薬(商品名:25mgアリナミンF糖衣錠など)や注射薬(商品名:アリナミンF25注など)がビタミンB1欠乏症の予防と治療、ビタミンB1の需要が増大し食事からの摂取が不十分な際の補給、脚気に併発した心不全やウェルニッケ脳症の治療などに用いられています。サプリメントは運動後など疲れが溜まった時やアルコールを多飲する人に勧められます。