東京慈恵会医科大学を24歳で卒業し、5年間母校の細菌学教室に在籍し、ぶどう球菌の研究に従事し、医学博士の学位受領後に内科学教室に移籍し、肝臓病を中心とした臨床と肝細胞培養研究班で研究を始めました。
肝細胞培養
ラットの肝臓から細胞を分離して、(肝臓病あれこれ)の「3)肝実質細胞とは?」と「4)肝非実質細胞とは?」で述べました実質細胞と非実質細胞の形態と機能についての研究、ヒト肝がん株の樹立とその形態と機能の研究、培養ヒト肝がん細胞の抗がん剤併用による温熱効果に関する研究などに関わりました。
AFP多様性
(肝臓病)の「12)肝がんとは?」で述べましたが、肝細胞がん(肝がん)ではアルファ・フェト・プロテイン(AFP)というよい腫瘍マーカーがあります。AFPは肝硬変でも上昇しますが、肝がんに特異度を高めたのがAFP-L3分画というマーカーです。AFPに heterogeneity(多様性)があり、分画できるという研究が始まった時期に、肝がん、転移性肝がん、肝硬変の患者さんの血清で分画比に差がみられると報告しました。
モノクローナル抗体
34歳から36歳にかけて2年間、アメリカ合衆国のニューヨークにあるコロンビア大学のがん研究所で、乳がんの血清診断に有用な当時最先端のモノクローナル抗体作成に従事しました。モノクローナル抗体とは、異物の抗原決定基の中から1種類(モノ)とだけ結合する抗体を人工的にクローン増殖させたものをいいます。当時作成したモノクローナル抗体が、乳がんの血清診断の測定試薬BCA225に現在日本で使われています。
HBVゲノムの組込み
(肝炎ウイルス)の「5)B型肝炎ウイルスとは?(4)」で述べましたが、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染に伴い、肝細胞のヒトゲノムにHBVゲノムの組込みが起こり、がん関連遺伝子の発現を引き起こし、肝がんが発生すると考えられています。肝細胞培養研究班で樹立したHBV陽性の肝がん由来の継代培養JHH-7株細胞に、HBVゲノムの組込みが認められることを報告しました。