針刺し事故によるHCV感染

(肝臓病)の「40)針刺し事故とは?」で述べましたが、針刺し事故とは、医療従事者が患者さんに使用した血液の付着した注射針を誤って刺してしまう事故で、肝炎ウイルスの感染が問題となります。C型慢性肝炎の患者さんと、その患者さんに使用した注射針で刺傷してC型急性肝炎を発症した看護師さんで、両者の血中のC型肝炎ウイルス(HCV)RNAの塩基配列が一致し、針刺し事故でHCV感染もおきることを報告しました。

C型肝炎の注射薬治療

(肝臓病)の「10)治療の対象となるC型肝炎は?」で述べましたが、柏病院に赴任して5年目の1992年よりC型肝炎に対してHCVを体内から排除するインターフェロンという注射薬が使われました。飲み薬(経口薬)の併用など治療法の改善により、年々有効率が高くなっていきましたが、副作用が多くでました。筆者が在任中、肝臓班として何百人もの患者さんに治療を行い、治療成績や副作用を報告しました。

B型肝炎治療薬の耐性変異

柏病院に赴任して13年目の2000年よりB型肝炎ウイルス(HBV)の増殖に必要なDNAポリメラーゼの働きを阻害してウイルスを抑える核酸アナログ製剤のラミブジンという経口薬が使えるようになりました。(肝炎ウイルス)の「5)B型肝炎ウイルスとは?(4)」で述べましたが、長期間服用すると、薬が効かない耐性変異ウイルスが現れ、肝炎を再発することがあり、他の製剤に切り替えや併用が必要でした。ラミブジンの投与期間中の抑制効果が、耐性変異ウイルスの出現に最も影響しているとわかり報告しました。

HBVの潜在性感染

(肝炎ウイルス)の「5)B型肝炎ウイルスとは?(4)」で述べましたが、HBs 抗原陰性なのにHBV DNA が検出される状態を潜在性HBV 感染と呼んでいますが、免疫抑制剤・化学療法により肝炎を発症し、劇症化することもあります。劇症肝炎を含め潜在性感染の患者さんの血液でHBV DNAの全領域の塩基配列の解析を行い、慢性肝炎の1例でX領域の開始コドンが変異していることを確認して、潜在性感染の原因の1つと考え報告しました。