肝逸脱酵素とは、肝障害時に肝細胞が壊されたり、肝細胞膜の透過性が亢進したりすることによって、細胞内の酵素が細胞外に流れ出て、血中濃度が上昇する酵素です。

肝機能検査で繁用される酵素

(肝臓病)の「6)肝機能検査とは?」で述べましたが、肝細胞の中にあるAST、ALTというアミノ酸の代謝に関わる酵素やLDHという糖がエネルギーに変わるときに働く酵素が肝機能検査の中で繁用されています。肝臓に障害が起こると肝細胞から血液中に流れ出て値が上昇するので、肝臓の障害とその程度を知るよい指標になります。

AST

ASTはaspartate aminotransferase(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の略で、以前はGOTと呼ばれていたアミノ酸の代謝に関わる酵素です。ASTは心筋、骨格筋、赤血球などにも広く存在しますが、肝臓にも豊富に存在するので、肝障害の指標になります。ASTには細胞質(C-AST)とミトコンドリア(m-AST)に存在する2種類のアイソザイムがあり、m-ASTはミトコンドリア膜に包まれているため、強い細胞障害の場合に血中に認められます。

ALT

ALTはalanine aminotransferase(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の略で、以前はGPTと呼ばれていたASTと同じくアミノ酸の代謝にかかわる酵素です。ALTは主に肝臓に存在しますので、ALTがより特異的な肝障害の指標となります。日本肝臓学会はALT値が30を超えたらかかりつけ医へ受診を促す新たな指標を定めました。

LDH

LDH(LD)はlactate dehydrogenase(乳酸脱水素酵素)の略で、糖質をエネルギーに変える働きをしている酵素です。LDHは心筋、腎臓、赤血球などにも広く存在しますが、肝臓にも豊富に存在するので、肝障害の指標になります。LDHには1~5の5種類のアイソザイムがあり、各臓器でアイソザイムパターンに特徴があり、各臓器で障害臓器を推定できますが、肝障害ではLDH5が上昇します。