腹水とはたんぱく質を含む液体が腹腔内に貯留した状態です。

分類

たんぱく質が多い滲出(しんしゅつ)性腹水と少ない漏出(ろうしゅつ)性腹水に分類されます。滲出性腹水は、お腹の中に炎症が起こり、腹膜の血管透過性亢進などにより、たんぱく質を多く含んだ血液成分が腹腔内にしみ出したもので、がん性腹膜炎で多くみられます。漏出性腹水は、腹膜自体に病変がなく、血液の水分が腹腔内に漏れ出たもので、肝硬変、ネフローゼ症候群、心不全などでみられます。

肝硬変での発生機序

肝硬変で腹水が溜まるのは、「10)門脈圧亢進症とは?」で述べます門脈圧亢進症と(肝臓病)の「21)肝硬変の治療は?」で述べました血液中のアルブミン濃度の低下が原因です。お腹の中の臓器の血液が集まる門脈の内圧が、肝硬変で肝臓が硬くなると高くなり、血管から水が漏れ出てきます。アルブミンは血管の中の水分量を保つ役目をしていますが、肝硬変で肝臓の働きが悪くアルブミンが不足すると血管内の水分が外に漏れ出てきます。

診断

腹水は少量では症状はみられませんが、大量になるとお腹が膨らんで蛙腹になったり、胃が圧迫されて食事がとれなくなったり、横隔膜を押し上げて肺が膨らみにくくなり息切れすることもあります。大量であれば診察で診断がつきますが、超音波やCTなどの画像検査で診断します。原因を調べるためにお腹に針を刺して腹水を抜き、腹水が滲出性か漏出性か、血液・細菌・癌細胞の有無などを検査することもあります。

肝硬変での治療

(肝臓病)の「22)肝硬変の食事療法は?」で述べましたが、塩分は体に水分を貯めるので、1日5~6g程度に塩分を制限します。アルブミン値の低下がある場合は、アルブミンの点滴を行うこともあります。水分を体外に排出するため利尿剤を使用します。症状が強い時にはお腹に針を刺して体外に排出する腹水穿刺吸引を行います。腹水には栄養分も含まれているため、腹水から水分を取り除いて点滴として体に戻す、腹水濾過濃縮再静注法(CART)が行われることもあります。