日本住血吸虫症とは、寄生虫の日本住血吸虫の感染で引き起こされ、肝硬変を発症して肝不全で死亡することもある病気です。

肝臓を侵す寄生虫

寄生虫は、1つの細胞(単細胞)からできている原虫と、多くの細胞(多細胞)からできていて肉眼で見ることができる蠕虫(ぜんちゅう)の2つに分類されます。日本住血吸虫は蠕虫の1つですが、原虫では「14)肝膿瘍とは?」で述べました赤痢アメーバのほか、マライア原虫など、蠕虫では「13)肝嚢胞とは?」で述べました包虫(エキノコックス)のほか、肝吸虫、肝蛭(かんてつ)などがあります。

感染経路

日本住血吸虫は、山梨県の甲府盆地や九州の筑後川流域などに分布していた宮入貝に生息していましたが、対策がすすんで新規の発症はほとんどありません。宮入貝に生息する日本住血吸虫の幼虫セルカリアは水中で運動性を持ち、人の皮膚を貫通して体内に侵入します。侵入した幼虫が体内で成虫となり、腸管・門脈・肝臓などに棲息し産卵します。

症状

体内に侵入してから2~3週間で、全身倦怠感、食欲不振、腹部違和感などの初期の症状が現れます。体内に棲息し産卵が続くと血管を詰まらせて症状を引き起こします。肝臓内の細い門脈の枝が詰まるとやがて肝硬変を引き起こし、腹水による腹部膨満や呼吸困難、食道静脈瘤形成などがみられるようになります。脳梗塞を発症することもあり、麻痺や言語障害などの症状が現れます。

診断・治療

日本住血吸虫の虫卵を確認することで診断します。腸管に寄生することが多いため、便を用いて検査が行われます。日本住血吸虫に反応して産生さる抗体を検出することもあります。腹部超音波検査では肝臓に門脈内の石灰化した虫卵や線維化を反映して網目状(亀甲状)の線状高エコーが認められます。治療には駆虫薬のプラジカンテル(商品名:ビルトリシド錠)という経口剤が用いられます。