門脈圧亢進症とは、腸管や脾臓から肝臓に集まる血液の流れに抵抗が生じて門脈の圧力が上昇した状態と生じる症状を指します。
原因
血流抵抗が生じる部位から肝前性、肝内性、肝後性に分類されますが、主たる原因は肝内性である肝硬変で約80%を占めます。(肝臓病)の「7)肝硬変とは?」で述べましたが、肝臓に慢性的に炎症が続くと、炎症により破壊された肝臓の組織が線維化して硬くなり、門脈の圧力が高まります。他には、肝前性の肝外門脈閉塞症、肝後性のバッド・キアリ症候群、原因不明な特発性門脈圧亢進症などがあります。
症状
門脈圧亢進症では、肝臓を通してスムーズに心臓へ血液を送れず、肝臓を迂回する側副血管が形成されます。迂回路の血管が拡張してコブができる食道・胃静脈瘤も生じます。静脈瘤が破裂すると、吐血や下血などの症状が出ます。腹水貯留、脾腫・脾機能亢進などの症状も出現します。脾機能亢進により血小板、赤血球が減少して出血傾向、貧血などの症状が出ます。有害物質が迂回路を通って脳に達すると意識障害などの症状がでる肝性脳症になります。
診断
門脈圧亢進症は諸検査により診断されます。血液検査では、脾機能亢進による血小板や赤血球の減少、肝性脳症を示す高アンモニア血症、肝機能検査により肝硬変の有無など調べます。腹部超音波、CT、MRIなどの画像検査では、肝硬変、脾腫、腹水の有無、血管の走行や血行動態の評価をします。上部消化管内視鏡検査では、食道・胃静脈瘤の状態を評価します。門脈造影検査で門脈圧を直接測定することもあります。
治療
原因が肝硬変の場合は、(肝臓病)の「21)肝硬変の治療は?」で述べました治療を行います。食道静脈瘤に対しては、内視鏡で静脈瘤結紮術(EVL)や硬化療法(EIS)という治療を行います。胃静脈瘤に対してはバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)というカテーテル治療を行うことがあります。脾機亢進に対しては、部分的脾動脈塞栓術(PSE)や脾臓摘出術が有効です。