肝膿瘍とは、肝臓内に細菌や原虫が侵入して増殖し、膿が溜まった状態をいいます。

原因

細菌性とアメーバ性があります。細菌性は、多くは急性胆管炎や胆嚢炎などの肝臓の近くの臓器の細菌感染が直接肝臓におよんでおきます。虫垂炎などの腸管感染症に際し、細菌が門脈を経由して肝内に到達し膿瘍を形成する場合もあります。Klebsiella pneumoniae(クレブシエラ・ニューモニエ)という菌による肝膿瘍が近年増加しています。アメーバ性は、Entamoeba histolytica(赤痢アメーバ)という寄生性の原虫による腸管内感染から、門脈を経由して肝内に到達し膿瘍を形成するとされています。

症状

発熱、全身倦怠感、右上腹部痛の3つが代表的な症状です。発熱は38℃〜40℃程度の高熱が続きます。食欲不振、嘔気・嘔吐、体重減少などの症状もみられます。胆管炎を伴う場合は黄疸が現れます。アメーバ性では、腸炎に伴う粘血便や下痢がみられることもあります。

診断

上記の症状に加え、血液検査で白血球の増加、CRPの高値、肝機能検査の異常、腹部超音波検査で肝臓内に境界が不明瞭な低エコー性の占拠性病変が認められれば、肝膿瘍が疑われます。造影 CTやMR検査で確認し、大きさ、数、周囲臓器への影響などを調べます。アメーバ性では肝臓の右側に単発のことが多くみられます。針を刺して内容物を採取する穿刺検査を行うと、細菌性では腐敗臭があることが多く、アメーバ性では無臭で暗赤色の特徴があります。

治療

細菌性に対しては、穿刺検査で検出された菌などを参考に抗菌薬(抗生物質)の投与を行います。大きな膿瘍や重症な場合は、抗菌薬の投与に加えて体表から穿刺して膿瘍にチューブを挿入し、膿を持続的に体外に出す経皮経肝ドレナージを行います。アメーバ性に対しては、抗原虫剤のメトロニダゾール(商品名:フラジール)を経口投与します。