アルコール依存症とは、長期間多量にアルコールを摂取し続けることによって、飲酒しないといられなくなる状態に陥る精神的な病気です。
出現する問題
長期間多量に飲酒を続けると脳の仕組みが変化し、飲酒したいという強烈な欲求がわき、アルコールが体から抜けると、イライラ、不眠、頭痛、手の震え、発汗、頻脈などの離脱症状が出てくるので、抑えるために飲酒を続け、アルコール性肝障害、膵炎、脂質異常症などの発症がみられてきます。また、仕事中に隠れて飲酒をする、朝から飲酒をするなど、仕事や家庭生活にも支障が出てくることもあります。
スクリーニングテスト
アルコール関連問題の評価に用いられる世界中で最もよく用いられているのはAUDITという検査です。アルコール依存症のスクリーニングテストとしても用いられています。世界保健機関(WHO)により依存症までには至っていない危険な飲酒のレベルの人に介入する目的で作成されました。テストは10項目で、各項目に0点から4点の点数が付与され、最も悪いのが40点で、日本では15点以上をアルコール依存症としています。
治療
アルコール依存症の人は自分が病気であることを認めたがらないという問題があります。治療の中心は、集団精神療法や、同じアルコール依存症の人たちの自助グループに参加することです。短期的に断酒することは比較的容易ですが、再発しやすいのが特徴で、家族や周囲の人のサポートが大切になります。
薬物療法
アルコール依存症の治療は補助的に薬物療法も用いられます。アルコール依存症の治療薬として、飲酒後の不快反応を利用して飲酒を断念させる抗酒薬のジスルフィラムとシアナミドと断酒維持のためのアカンプロサートがわが国では承認されていましたが、飲酒量を低減させる効果があるナルメフェン(商品名:セリンクロ)が2019年から使えるようになっています。