正常の肝臓に短期間で広汎な壊死が生じ、進行性の皮膚が黄色くなる(黄疸)、意識が混濁する(肝性脳症)などの症状が出現する急性肝不全の中で、ウイルスなどが原因で炎症を伴う肝不全を劇症肝炎と呼んでいます。

診断基準

肝炎のうち初発症状出現後8週以内に高度の肝機能障害に基づいて、指南力の低下、異常行動、傾眠状態などがみられる昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症をきたし、出血傾向の検査のプロトロンビン時間が40%以下(INR値1.5以上)を示すものを劇症肝炎としています。症状出現後 10 日以内に脳症が発現する急性型と11日以降に発現する亜急性型に分類されます。

成因

成因はウイルス性、薬物性、自己免疫性、成因不明に分類されています。ウイルス性ではA、B、C、E型肝炎ウイルスが原因になります。最も多いのはB型肝炎ウイルス(HBV)によるものですが、HBVの急性感染と肝機能正常のキャリアからの発症のほか、「37)B型肝炎ウイルスの再活性化とは?」で述べましたが、HBVの既往感染者が免疫抑制・化学療法を受けた後に、再活性化により発症することもあります。

症状

急性期には急性肝炎と同様にお腹が気持ち悪い(腹部不快感)、食欲がない(食欲不振)、全身がだるい(全身倦怠感)などの症状をみられます。昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症の出現時には黄疸と手指がふるえる(羽ばたき振戦)が多くみられます。お腹に水が貯まる(腹水)は亜急性型で多くみられます。高率に全身の合併症を併発し、多臓器の不全に陥ることもあります。

治療
重要なのは、成因に対する治療と肝庇護療法によって肝臓の壊死の進展を阻止することです。専門医療機関での治療が必要で、昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を併発して劇症肝炎と診断された場合は、血漿交換を中心とした人工肝補助療法を開始します。予後予測で死亡が予測された場合には肝移植の実施が必要となります。