発症する肝臓病

B型肝炎ウイルス(HBV)は急性肝炎の原因となり、発症までの潜伏期間は平均60〜90日ですが、感染者の70〜80%は症状のない不顕性感染です。時に重症化し、致命的な劇症肝炎となることがありますが、多くは一過性の感染で終わります。一方、母子感染と一部の水平感染はHBVキャリアとなり、その多くは10歳代後半から20歳代に肝炎を発症し、その中の10~15%は慢性肝炎に移行し、放置すると肝硬変、肝がんに進展します。

型肝炎の発症機序

HBV自体は肝細胞を破壊することはありません。ウイルスを異物と認識した場合に免疫機能が働き、体内から排除しようとしますが、免疫機能は肝細胞の中にいるウイルスを直接に攻撃することはできなく、リンパ球の中の細胞傷害性T細胞が感染細胞上のHBcAgやHBeAgを標的として攻撃することにより、肝細胞が傷害されて肝炎が引き起こされます。

重症化機序

 急性肝炎が発症すると、時に重症化し、致命的な劇症肝炎となることがありますが、成因の中で最も多いのはHBVによるものです。劇症化の機序として、ウイルス側と宿主側の要因が考えられています。ウイルス側の要因として、D型肝炎ウイルスの重複感染があげられますが、日本ではまれです。C型肝炎ウイルスの重複感染は劇症化に関与する可能性は低いと考えられます。「B型肝炎ウイルスとは?(4)」で述べますが、プレコアやコアプロモーター領域の遺伝子の変異があるHBe 抗体陽性例では劇症化しやすいことが知られています。

HBV関連腎症

HBVキャリアにおいて、HBe抗原を含む免疫複合体の産生を引き起こし、腎臓の糸球体に沈着して発症する糸球体腎炎をHBV関連腎症と呼んでいます。成人では膜性増殖性糸球体腎炎、小児では膜性腎症が多く、無症状性キャリアであっても発症し、尿中にたんぱくが多量に出るネフローゼ症候群を呈することが多いとされています。