発見の歴史
D型肝炎ウイルス(HDV)はデルタ(δ)肝炎ウイルスともよばれ、1977 年Rizzetto らにより、HDV がコードする唯一の蛋白であるδ抗原抗体系が発見されました。B 型肝炎ウイルス(HBV)のヘルパー作用を必要とする不完全ウイルスであり、HDV はHBV感染者のみに感染が成立します。
ウイルスの構造
HDV は直径36 nmの球状粒子で、HBV粒子とともに存在します。HDV粒子は外被(envelope)と芯(core)からなっており、envelopeはHBs抗原からなり、coreは1.7 kbの環状1本鎖RNAとδ抗原を包含する二重構造を示します。
感染経路
HDVは感染者の血液や体液を介して感染します。HDVの感染にはHBVを必要とし、HBVと同時に、または重複した時に成立します。HDVの分布には地域差があり、地中海地方や北欧、中東、アフリカ北東部で多く、日本ではまれです。HDVへの感染はB型肝炎ワクチンの接種によって予防することができます。
発症する肝臓病
HDVは上記のようにHBVの感染状態にある宿主においてのみ感染が成立する特異なウイルスです。わが国においてはHDV感染は低率であることから、HBs抗原陽性者に対して一律にHDVマーカーを測定するのではなく、B型劇症・重症肝炎の時、無症候性HBVキャリアの急性発症時あるいはB型慢性肝炎の急性増悪時、HBe抗原陰性にもかかわらずALTの変動がみられる時などにHDVマーカーを測定し、HDVの関与につき検討することが望ましいと思われます。