アルコールの過剰摂取が原因で引き起こされるさまざまな肝臓病を総称してアルコール性肝障害といいますが、最近ではアルコール関連肝疾患といわれるようになってきています。
原因
一日純アルコール量60ｇ（日本酒３合相当）以上、５年以上の飲酒者を常習飲酒家、100ｇ（日本酒５合相当）以上、10年以上の飲酒者を大酒家と呼んでいますが、飲酒量が多いほど、期間が長いほどアルコール性障害が起こりやすくなります。また、アルコールの代謝物を分解するためのアルデヒド脱水素酵素（ALDH）という酵素の遺伝子型によって、アルコールに対する強さが決まっています。また、性差もあり、女性は少量もしくは短期間の飲酒で肝障害が発症します。
進展様式
アルコール性肝障害は、脂肪肝からアルコール性肝炎、あるいは肝線維症を経て、肝硬変、肝がんへと進展します。アルコールの過飲により最初に起きる肝病変は脂肪肝です。常習飲酒家の大半に脂肪肝を認めます。飲酒の継続により、一部がアルコール性肝炎へ進展します。アルコール性肝線維症は、飲酒の継続によりコラーゲン産生が起こり、脂肪変性や炎症が軽度で線維化が生じた状態です。
診断
常習飲酒家で5年以上続けている人、但し、女性やALDHの低い人では３分の２の飲酒量で、アルコール性肝障害になる可能性が高いので、飲酒量について聴取します。多量飲酒する人は飲酒量を実際よりも少なく申告することも多いので注意が必要です。血液検査ではγ-GTP値の上昇が特徴で、禁酒によりAST、ALT、γ-GTPの値が改善します。肝炎ウイルスマーカー陰性など他の肝臓病の否定が必要になります。
治療
基本は禁酒と食事療法です。食事は不足するビタミンを補い、鉄分を控えてバランスよくします。脂肪肝の人は摂取カロリーの適正化を図ります。栄養状態が悪い状態の人ではエネルギー不足にならないように注意します。アルコール依存症などが背景にある時は精神科と連携が必要となることもあります。
