発見の歴史
B型肝炎ウイルス(HBV)は1964年に米国のBlumbergらによるオーストラリア抗原として発見されました。発見当初は免疫血清学的手法を用いて研究されてきましたが、1970年にHBVの本体であるDane粒子が同定され、さらに1979年にウイルスゲノムのクローニングでHBV DNAの全塩基配列が決定され、HBVおよびB型肝炎に関する知見は飛躍的に進展しました。
ウイルスの構造
HBVは直径約42nmの球状粒子で、外被(envelope)と芯(core)の二重構造を有しています。表面(surface)を被うenvelopeたんぱくがHBs抗原、その内側のcoreたんぱくがHBc抗原と呼ばれます。芯の中には、不完全二本鎖のHBV DNAやDNAポリメラーゼが存在しています。
ウイルス遺伝子
HBV DNAは約3,200塩基からなり、この遺伝子にはHBs抗原、HBc抗原、HBxたんぱく、DNAポリメラーゼが翻訳されて作られるオープンリーディングフレームという4つの読み取り枠があります。HBxたんぱくはウイルスたんぱくの転写の調節や肝がんの発がんとの関連で注目されています。DNAポリメラーゼは特殊なHBVの複製に必要なRNAを鋳型としてDNA合成できる逆転写酵素として働きます。
遺伝子型
HBVは遺伝子レベルでの分類が行われ、これまでにA型からH型まで8種類のgenotype(遺伝子型)が同定されています。遺伝子型には地域特異性があり、臨床経過に違いがあることが知られています。ヨーロッパでは遺伝子A型・D型が多く、東アジアでは遺伝子B型・C型が多くみられます。日本では遺伝子C型が1番多く、次にB型で、C型はB型に比べて予後が悪いと考えられています。