ウイルスの生活環
B型肝炎ウイルス(HBV)は血液や体液を介して肝細胞に吸着、侵入後、細胞質で脱穀し、HBV DNAは核に移行します。HBVはDNAウイルスですが、一度細胞質にプレゲノムRNAを作り、このRNAから逆転写酵素によりDNAが合成されるという特徴があります。DNA合成の間に、core粒子はenvelopeで覆われ完全なHBV粒子となり、肝細胞から血中へと移行します。
cccDNA
HBVは一旦感染すると、ウイルスが肝細胞の核に侵入し、不完全二重鎖の環状 DNA遺伝子が完全二重鎖cccDNA(covalently closed circular DNA)の形で存在します。この HBV遺伝子は HBV複製の起源であり、全ての複製過程がここから始まります。この cccDNAは構造的に極めて安定であり、一過性の不顕性感染や既往感染者で血中のHBs抗原が消失しても長期に核内に残存します。
HBV感染者の現状
日本におけるHBVの感染者は、2015年の厚労省研究班の報告では約110~120万人と推定されています。主な感染経路は母親からの感染ですが、1988年まで行われていた注射器の連続使用による集団予防注射による感染者も含まれています。1985年より「B型肝炎母子感染防止事業」が実施され、若い世代の感染者率は低下しています。最近では性行為による遺伝子A型の感染者が増え、問題になっています。
感染経路
HBVに感染している人の血液、または体液を介して感染します。感染経路はHBVに感染している母親からの感染(母子感染:垂直感染)と、それ以外による感染(水平感染)があります。母子感染した乳幼児は免疫機能が未熟で、HBVを排除できず、キャリアとなります。水平感染の原因としては、輸血、集団予防接種、傷口への血液の付着、針刺し事故、性交渉、覚せい剤の回し打ち、入れ墨、ピアスの穴あけなどがあります。現在は垂直感染も水平感染も予防法がすすみ、かなり減っています。