体内にC型肝炎ウイルス(HCV)を持ち続けるHCVキャリアの大部分とC型急性肝炎の一部が抗ウイルス療法の対象となります。
治療の目的
HCVキャリアの多くは慢性肝炎を発症し、長期経過後に高率に肝硬変、肝がんへと進展するので、それを阻止するために抗ウイルス療法を行います。すでに肝硬変に進展している人も、さらに進んだ肝硬変、肝がんの発症を抑えるために対象となります。HCVキャリアは肝がんの主要な原因です。
インターフェロン
日本でも1992年よりC 型慢性肝炎に対して HCVを体内から排除するインターフェロン(IFN)という注射薬が使われてきました。IFNのペグ化やリバビリンなど飲み薬(経口薬)の併用など治療法の改善により、年々有効率が高くなっていましたが、副作用が多く、うつ症状、間質性肺炎、貧血、皮疹など重い副作用がでることもあるので、肝機能検査が正常な人には、治療は行わずに経過を見ていました。肝機能検査のALTが高値で進展の危険はありますが、IFN治療が行えない時には、グリチルリチン製剤(商品名:強力ネオミノファーゲンシー静注)の注射薬やウルソデオキシコール酸(商品名:ウルソ錠)などの経口薬で肝臓の炎症を抑える治療をしていました。
経口薬
2014年よりDAA(直接作用型抗ウィルス剤)と呼ばれる経口薬のみでHCVを体内から排除する「IFNフリー治療」ができるようになり、現在ではグレカプレビル・ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット配合錠)、レジパスビル・ソホスブビル(商品名:ハーボニー配合錠)などの経口薬を8~12週間服用することにより、ほとんど副作用がなく、95%以上の人で、HCVを体内から排除することができるようになっています。薬の選択のため、HCVの型(遺伝子型:ゲノタイプ、血清型:セログループ)を検査します。
C型急性肝炎
HCVに感染し、肝炎を発症すると、約30%の人は一過性の急性肝炎で治癒しますが、残りの約70%の人はHCVキャリアとなりますので、C型急性肝炎を発症して、慢性化の兆候がみられた時には抗ウイルス療法の対象となります。