肝障害発現機序
HCVにより脂質代謝、糖代謝、鉄代謝などの代謝異常が惹起され、これらがウイルス増殖も含めた病態に関わっていることがわかりつつあります。HCV core 蛋白発現マウスでは肝脂肪化が再現されています。C型肝炎は、B型肝炎や自己免疫性肝炎に比べ、脂肪肝の合併が多くみられます。また、C型肝炎で鉄が過剰となる機序は不明な点が多いですが、肝臓に必要以上に溜まった鉄が、過酸化水素と反応して活性酸素を発生させ、肝細胞を傷つけて、病態を悪化させています。
発がん機序
「5)B型肝炎ウイルスとは?(4)」で述べましたが、HBVは DNAウイルスであり、ホストゲノムへの組み込みが確認されていますが、RNAウイルスであるHCVはホストへの組み込みを認められません。上記の「肝障害発現機序」でも述べましたが、HCVは肝脂肪化、肝内鉄沈着などの代謝変化をもたらし、酸化ストレスを増強してミトコンドリア障害を惹起し、加齢に伴う抗酸化系の相対的な減弱が発がん機序に関連することが示されています。
薬剤耐性変異
(肝臓病)の「10)抗ウイルス療法の対象となるC型肝炎は?」で述べましたが、現在はDAA(直接作用型抗ウィルス剤)と呼ばれるNS3-4Aプロテアーゼ、NS5A複製複合体、NS5Bポリメラーゼなどの合成を阻害する経口薬のみのインターフェロンフリー治療により、短期間で安全に高率にHCVの排除ができるようになっています。治療奏効率の障害となっているのは、阻害するHCV遺伝子領域の薬剤耐性変異が原因と考えられています。
ワクチン
HCV感染の予防法として最も有効と思われるワクチンは、まだ実用化されていません。HCV粒子のenvelopeたんぱくを作る遺伝子(E2/NS-1領域)が変異を起こし易いため、感染を防御する有効な中和抗体を産生しにくいとされています。