甲状腺疾患と肝障害(肝臓病)には以下のような関係がみられます。

甲状腺疾患に伴う肝障害

甲状腺ホルモンが多く分泌される甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、ホルモンにより肝細胞の代謝が異常に亢進し、肝機能検査の異常が出現します。甲状腺ホルモンが少なくなる甲状腺機能低下症(橋本病など)では、体内の代謝物質のクリアランスが低下するため、肝機能検査の異常が出現します。画像診断、肝生検検査では特異的な所見ありません。原因不明の肝障害は、甲状腺疾患の可能性があります。

甲状腺疾患と肝臓病の合併

慢性甲状腺炎(橋本病)は甲状腺の慢性の炎症のために、甲状腺腫大や甲状腺機能低下症を生じる中年の女性に多い自己免疫性疾患です。「27)原発性胆汁性胆管炎とは?」と「28)自己免疫性肝炎とは?」で述べましたが、同じく中年の女性に多い自己免疫性疾患の原発性胆汁性胆管炎や自己免疫性肝炎との合併がしばしばみられます。

肝臓病治療薬の副作用による甲状腺疾患

「10)治療の対象となるC型肝炎は?」で述べましたが、C型肝炎の治療に多く使われてきましたインターフェロンという注射薬の副作用の一つとして、甲状腺機能異常が知られています。インターフェロンはB型肝炎の治療にも使われます。甲状腺機能異常については甲状腺機能亢進症と、逆の甲状腺機能低下症があります。甲状腺ホルモンを治療前に測定することで、発症を予測できることもあります。

甲状腺疾患治療薬の副作用による肝障害

甲状腺機能亢進症の治療に使われるチアマゾール(商品名:メルカゾール)とプロピルチオウラシル(商品名:チウラジ-ル/プロパジール)の副作用として「29)薬物性肝障害とは?」で述べました肝障害が時にみられます。チアマゾールによる肝障害は胆汁うっ滞型が多く、プロピルチオウラシルによる肝障害は肝細胞障害性で、劇症肝炎をおこすこともあります。