薬物で治療する過程において肝機能障害として出現する副作用を薬物性肝障害とよんでいます。近年、薬物の使用頻度や種類の増加に伴い、増えてきています。

原因

薬物を大量に摂取した時にみられる中毒性と体質により量に関係なく特定の薬物に対してみられるアレルギー性があります。大部分はアレルギー性で、抗生物質など抗菌剤や解熱鎮痛剤が原因薬物の1~2位を占めますが、精神神経用薬、消化器用薬などほとんどの薬物が原因となります。健康食品、漢方薬の割合が近年増えています。服用開始から肝障害発現までの期間は多くは30日以内ですが、健康食品と漢方薬では90日を超えることもあります。

診断

薬物を服用していて、全身がだるい、食欲がない、熱が出る、皮膚が痒くなる、皮膚が黄色くなるなどの症状が出てきたら、薬物性肝障害が疑われます。診断には、ウイルス肝炎などを除外して、2004年の日本消化器関連学会週間で提案された基準が長年用いられてきました。診断時のALT値とALP値から肝細胞障害型と胆汁うっ滞型に分類をした後、発症までの期間、経過、薬物以外の原因の有無など8項目のスコアを計算し、総スコアから判定しています。2023年から改定されたRECUM-J2023が診断基準として用いられています。

治療

薬物や健康食品を服用していて、肝障害を疑う症状が続く時は、服用を中止し、医療機関を受診する必要があります。肝細胞障害型の治療は、グリチルリチン注射薬やウルソデオキシコール酸の投与、胆汁うっ滞型では、ウルソデオキシコール酸、プレドニンゾロン、フェノバルビタールの投与が行われます。まれに劇症化することがあり、その時は専門医療機関での治療が必要です。診断および治療に厚生労働省のホームページ の「重篤副作用疾患別対応マニュアル. 肝臓」の「患者の皆様へ」が参考となります。

救済制度

医薬品等を適正に使用したにもかかわらず、入院治療が必要になるほどの健康被害がおきた時には、医療費の給付を受けられる医薬品副作用被害救済制度があります。具体的には医薬品医療機器総合機構のホームページの「医薬品副作用被害救済制度」で確認できます。